新型コロナウィルス感染症

新型コロナウィルス感染症の重症化予防は健康的な生活習慣が基本

【はじめに-新型コロナ感染症の重症化予防】

高齢者は新型コロナウィルスに感染すると重症化しやすく、そして重症化するとぐんと死亡リスクが高まってしまう。何とか手立てはないものなのか。たとえば生活習慣。良い生活習慣のある人と、ない人を比べると新型コロナウィルスに感染したときの重症化に差があるのだろうか?あるなら、どういう生活習慣に気をつければ、重症化のリスクを下げることができるのだろうか?今回は、この疑問への答えを探っていきます。

【新型コロナ感染症の重症化と生活習慣】

この疑問に答えてくれる研究は、新型コロナウィルスにひどい目にあわされた英国で実施されていました。現在進行中の前向きコホート研究である英国バイオバンク研究の情報と新型コロナウィルス感染症の感染登録情報をリンクさせて解析しています。英国バイオバンク研究は38万7千109人の男女(56.4 ± 8.8 歳; 55.1%女性))の生活習慣(喫煙、運動、肥満、飲酒)と各種疾病リスクや死亡リスクを研究しています。今回は新型コロナウィルス感染症との関係を明らかにしました。英国バイオバンク研究への試験参加者のうち2020年3月16日から4月26日までに新型コロナウィルスに感染して重症と判断されて入院した人は760人でした。これら重症患者とそうでなかった人たちを比較して生活習慣ごとの重症化リスク(年齢性別調整後)を解析したのです。結果は:肥満者(BMIが30以上)は健常体重者(BMIが25未満)と比較して2.05倍 (95%信頼区間 1.68-2.49倍) 重症化リスクが高いことが分かりました。喫煙者は喫煙歴のない非喫煙者と比較して1.42倍 (95%信頼区間 1.12-1.79倍)、運動をしない人は英国運動ガイドライン(※1)を満たす人と比較すると1.32倍(95%信頼区間 1.10 – 1.58倍)重症化リスクが高いことが分かりました。飲酒ではリスク上昇は認められませんでした (1.12倍だが95%信頼区間が0.93-1.35倍と統計的に有意な上昇が認められなかった)。
総合的な生活習慣を不健康習慣スコア(※2)として定量化すると用量依存性があり(図1参照)、最も悪い生活習慣のグループは最も良い生活習慣のグループと比較すると何と4.41倍(95%信頼区間 2.52-7.71倍)も高い重症化リスクがあることが判明しました。

 

【上記研究の注釈】

※1:英国運動ガイドライン:中強度(歩く・軽い筋トレをする・掃除機をかける・洗車する・子供と遊ぶ程度)の運動を週150分以上か、高強度(ゆっくりとしたジョギング程度)の運動を週75分以上。
※2:不健康習慣スコア:スコアは0点(もっとも健康)から8点(最も不健康)。以下の各項目の点数の加算点。喫煙(0:喫煙歴なし、1:喫煙歴あり、2:現在喫煙)、運動 (0:ガイドライン適合、1:ガイドライン以下だが運動する、2:運動しない)、飲酒(0:全くまたは稀に、1:ガイドライン範囲内で中等度、2:ガイドラインを超えた高度)英国飲酒ガイドライン:男性は日に3-4ユニットまで、女性は2-3ユニットまで(1ユニットは純アルコール8g)、肥満(0:健康体重、1:過体重、2:肥満)BMI<25:健康な体重、25以上30未満:過体重、30以上:肥満。

【まとめ】

本論文では、不健康な生活習慣は、全身で低レベルの炎症(慢性炎症:加齢でも炎症レベルの上昇は進行する)を、引き起こし免疫を誤作動しやすい体質に変化させている可能性が指摘されています。
そこで:
①  あなたが、もしも、適正体重よりも太っていれば、夜の食事は、炭水化物は少なめにして、9時までに食べ終わることをお勧めします。
②  電子タバコも含めて、喫煙習慣のある人は、この際、禁煙に挑戦しましょう。
③  運動習慣のない人は、少しでも体を動かしましょう。できれば毎日20-30分歩くか、隔日で20-30分ジョギング程度の運動を目指すことをお勧めします。さらに体力的な若返りを目指す人は「インターバル速歩」に挑戦してください。
出歩くことが少なくなっていますが、従来の運動量を維持することを意識して運動しましょう。また、万が一、寝込んでしまう場合にも備えておきましょう。非常時に免疫担当細胞が使用する武器はたんぱく質で出来ています。武器の原料であるアミノ酸をたんぱく質として筋肉に備蓄しておきたいものです。スクワットで下半身を毎日、鍛えることを、お勧めします。汗ばむ程度に運動をすると、とても気分がよくなります。100歳を目指す私は、コロナ禍だからこそ、過去最高の健康を目指して元気に過ごそうと、自分に合った食べ物や睡眠や運動を色々試す今日この頃です。健康状態が上がると慢性炎症レベルが下がるせいか、気分がよくなって、なかなか楽しいものです。

【出典】

記事の根拠となっている英語論文を、直接ご覧になりたい方のために出典を示しています。
閲覧方法は、リンクをクリックするかhttps://doi.org/10.1016/j.bbi.2020.05.059 部分をコピーしてGoogleクローム等のWEBブラウザーのアドレス窓あるいは検索窓にペーストして、検索先の文章をご覧ください。Googleクロームだと拡張機能のGoogle翻訳を使うと、ぎこちない訳ですが、日本語でフォローすることができます。

 

出典1 Mark Hamer M., Mika Kivimaki M., Gale C.R. and Batty G.D. (2020) Lifestyle risk factors, inflammatory mechanisms, and COVID-19 hospitalization: A community-based cohort study of 387,109 adults in UK. Brain, Behavior, and Immunity 87, 184-187   https://doi.org/10.1016/j.bbi.2020.05.059

 

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