「ボケたくない寝込みたくない。」「ピンピンころりで一生を終わりたい。「だからこそ運動を習慣にしたい。」「でも、三日坊主で・・どうしたらいいの?」そう思っておられる方はぜひ最後まで読んでくださいね。それでは始めましょう。
脳も筋肉も若返る
一昔前は脳も筋肉も再生されず生まれた時がほぼ最大で老化とともに細胞数は減少するだけだと思われていました。ところが、最近、身体組織の再生を司る幹細胞という特別な細胞を検出する技術が進歩し分かってきたことは、記憶や認知機能で重要な脳の海馬の神経幹細胞や筋肉の再生をつかさどる筋肉幹細胞(筋衛星細胞)は、運動すると増加することが分かってきたのです。(出典1,2)
運動で脳は蘇る
運動によって脳の海馬の神経幹細胞の数が増えることから予測されるように「運動で認知症を予防できる」つまり「運動をすると、ボケにくい」との強いエビデンスも確認されています 。(出典3,4)頭が冴えれば、気分もいい。これはやらない訳にはいきませんよね。
運動で体力が蘇る
また歳をとって困ることの一つは疲れやすいことです。つまり体力が落ちて少し運動をするだけで疲れてしまう。いつも「疲れた。疲れた。」が口癖になっている。これを何とかしたいと思っておられる方は多いのではないでしょうか。体力は最大酸素消費量(車のエンジンの排気量のようなもの)として測定できます。この最大酸素消費量は20歳をピークに年齢とともに直線的に低下することが分かっています。(図―1)(出典5) 何とこの最大酸素消費量を運動によって増加させることができる事が分かっています。つまり、運動で体力を若返らせることができるということです。素晴らしい!(図―2で後程、説明)(出典6)
インターバル速歩
それでは、どんな運動をどれだけすれば効果的に体力を増加させることができるのでしょうか、また認知症を予防できるのでしょうか?その答えは、インターバル速歩にありました。インターバル速歩とは、早歩き3分、ゆっくり歩き3分(1セット)を交互に繰り返します(体力のない人は、無理せずに、早歩きの時間を1分とかに下げてすこしづつ目標を上げてみて下さい)。一日5セット30分、1週間に4日(1週間で15✕4=60分の早歩き)が目標です。早歩きとは、ややきついと感じる速さで歩くこと。ゆっくり歩きとは、息を整えるように楽に歩くことです。図-2を見てください、この図は、5ヶ月間インターバル速歩を続けた結果を表しています。縦軸が5ヶ月のトレーニングで起こる最大酸素消費量の変化量をしめし、横軸はインターバル速歩のうちの早歩き部分の1週間累計時間を示しています。ご覧のように、早歩き週間累計60分で、ほぼ最大効果に達しています。注目すべきは、0分。つまり5ヶ月間、全く早歩きのような身体への負荷をかけていないと、最大酸素消費量=体力が低下してしまうのです。このようにインターバル速歩は、加齢による体力低下をスローダウンするどころか増加させる=若返らせることが実証されている運動方法なのです。また血圧低下(収縮期血圧、拡張期血圧とも)、脚力増強も報告されています。(出典7)さらに認知機能の改善も期待できます。(出典8)今後さらに多くの研究がなされることに期待です。スゴくないですか?この運動の考案者は、日本人で、信州大学大学院院・能勢博・特任教授です。能勢先生、こんな素晴らしいトレーニング方法を、ありがとうございます。
なぜインターバル速歩は続けられるのか?
私、実は、コロナ禍でジムでの運動を断念し一大決心をして3万円ほどでスピンバイクを購入しました。はじめは、運動したくなったら、またがりさえすればいいので、これはいいと汗を流していたのですが、何とインターバル速歩を始めるや、スピンバイクにまたがる時間がめっきりと減りました。それはインターバル速歩の方が楽しいという単純な理由からです。インターバル速度は、散歩のように朝日や夕日に照らされた美しい景色を見ながら、鳥のさえずりや川のせせらぎを聞き、頬をなでる冬の冷たい風や春の甘い風を感じながら、また早朝のおいしい空気のにおいを感じながら、つまりとても幸せな気分で運動ができるので楽しいのです。また3分なら少しきつめの運動でもその後3分休めるのですから、何ということはありません。これで、体力も認知力も若返るのなら、やらない理由が見つからないというわけです。
まとめ
インターバル速歩は、楽(らく)で楽しい高齢者向きの運動です。1週間の早歩きトータル時間を60分、5か月継続で、体力増強、認知力回復が実感できます。身体のキレがよくなります。
出典
出典1 Cabral DF, Rice J, Morris TP, Rundek T, Pascual-Leone A, & Gomes-Osman J,2019, “Exercise for Brain Health: An Investigation into the Underlying Mechanisms Guided by Dose” Neurotherapeutics. 2019 Jul;16(3):580-599. doi: 10.1007/s13311-019-00749-w.
出典2 Macaluso F & Myburgh KH, 2012,”Current evidence that exercise can increase the number of adult stem cells” J Muscle Res Cell Motil. 2012 Aug;33(3-4):187-98. doi: 10.1007/s10974-012-9302-0. Epub 2012 Jun 7.
出典3 Carvalho A, Rea IM, Parimon T, & Cusack BJ, 2014, “Physical activity and cognitive function in individuals over 60 years of age: a systematic review” Clin Interv Aging. 2014 Apr 12;9:661-82. doi: 10.2147/CIA.S55520. eCollection 2014.
出典4 Gomes-Osman J et al., 2018, “Exercise for cognitive brain health in aging: A systematic review for an evaluation of dose” Neurol Clin Pract. 2018 Jun;8(3):257-265. doi: 10.1212/CPJ.0000000000000460.
出典5 鈴木政登ら, 2008, 「日本人の健康関連体力指標最大酸素摂取量の基準値」 デサントスポーツ科学 30巻 3-14.
出典6 Masuki S, Morikawa M & Nose H, 2019, “High-Intensity Walking Time Is a Key Determinant to Increase Physical Fitness and Improve Health Outcomes After Interval Walking Training in Middle-Aged and Older People” Mayo Clin Proc. 2019 Dec;94(12):2415-2426. doi: 10.1016/j.mayocp.2019.04.039. Epub 2019 Aug 30.
出典7 Nose H et al.,2009, “Beyond epidemiology: field studies and the physiology laboratory as the whole world” J Physiol. 2009 Dec 1;587(Pt 23):5569-75. doi: 10.1113/jphysiol.2009.179499. Epub 2009 Sep 14.
出典8 Northey JM et al., 2018, “Exercise interventions for cognitive function in adults older than 50: a systematic review with meta-analysis” Br J Sports Med. 2018 Feb;52(3):154-160. doi: 10.1136/bjsports-2016-096587. Epub 2017 Apr 24.(インターバル速歩での試験ではないが早歩きの習慣累計時間60分で認知機能の改善が期待できるとの根拠を与えるメタ解析論文)