劇的に効く治療薬やワクチン(国産ワクチンが一般人に行き渡るのは2022年のことと、専門家は指摘しています)が無いので新型コロナウィルスに感染するのを、誰もが恐れるべきですが、特に高齢者は真剣に恐れるべきです。そのことを理解するために、イギリスが総力を挙げて報告してくれた前向き観察コホート研究論文(出典1)は、とても参考になります。2020年2月6日から4月19日までの新型コロナウィルス感染症入院患者を観察した研究です。この研究では死亡リスクファクターを対照群と比較して死亡リスク比(死亡ハザード比)をコックス回帰分析という方法で推定しています(15194人の入院患者うち死亡者数3911人で解析)
それによりますと、持病を持つ人の死亡リスクは持病を持たない人と比較して慢性心疾患、慢性肺疾患、慢性腎疾患、肥満症、慢性脳神経疾患(脳卒中を含む)、がん、中等度以上の肝疾患において1.16倍から1.51倍(95%信頼区間下限値はいずれの持病でも1.0以上)でした。一方、高齢者の死亡リスクは、49歳以下の年齢層と比較して50歳代では2.63(95%信頼区間:2.06-3.35)倍、60歳代では4.99(3.99-6.25)倍、70歳代では8.51(6.85-10.57)倍、80歳以上では11.09(8.93-13.77)倍にもなっていました。また日本では、厚生労働省の発表によりますとお亡くなりになった方たちの9割以上が60歳以上の高齢者の方たちです。(2020年4月26日時点データ https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000625626.pdf) 高齢者であることが、どれほどの死亡リスクがあるのか、わかっていただけたと思います。また女性は男性と比較して0.81(0.75-0.86)倍低リスクでした。(やはり女性のほうが危機に強いのです。)とにもかくにも、高齢者は感染を避ける細心の注意を払う必要があります。ということで、この記事はここで終わりますが、どのように細心の注意を払うべきなのかは、「データに基づく高齢者の新型コロナウィルス感染予防」を、お読みください。
出典2:The Novel Coronavirus Pneumonia Emergency Response Epidemiology Team http://weekly.chinacdc.cn/fileCCDCW/journal/article/ccdcw/2020/8/PDF/COVID-19.pdf ”The Novel Coronavirus Pneumonia Emergency Response Epidemiology Team.”
出典3:Zunyou Wu & Jennifer M McGoogan, JAMA. 2020 Feb 24. doi: 10.1001/jama.2020.2648. https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762130